もっているものでうまくやる

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【結論】パートナーのことは大切なひとと呼べ

なぜパートナーの呼び方を問題だと思うのか

パートナーの呼び方は、一見単純な問題のようでいて、実は私たちの社会や歴史、価値観が色濃く反映されています。

「妻」「奥様」「ハニー」「ワイフ」これらの言葉を選ぶたびに、私たちは知らず知らずのうちに特定の社会的文脈や歴史的背景を呼び起こしています。

世界の認識が言語から始まることを考えると、言葉の選択は世界の選択でもあるはずです。

従来の呼び方が持つ歴史的文脈

「妻」という言葉には日本の家父長制度の名残が感じられます。「奥様」には敬意が込められている一方で、「奥」に置かれるべき存在という古い家族観も内包しています。

外来語の「ワイフ」は現代的ですが、所有の概念を想起させます。『パラサイト 半地下の家族(기생충)』でも見られるように「トロフィーワイフ」という概念さえあります。

また「ハニー」や「ダーリン」といった愛称は親密さを表現できますが、時に公の場では違和感を生じさせることもあります。

他の選択肢としてある「パートナー」という呼び方は仕事の関係上の付き合いにも感じられドライさがありますし、「相方」にはお笑いの文脈を感じます。

これらの言葉は長い歴史の中で形成され、特定の時代や文化の価値観を反映しています。そのため、どの言葉を選んでも、ある視点からの批判を完全に避けることは難しいのかもしれません。

「大切なひと」という選択

パートナーのことをどのように呼ぶのか、そんな単純なことを僕は複雑に考え、答えを出せずにいました。そんな中で「大切なひと」という呼び方が良いのではないかと思い始めています。

この呼び方は、つぎのような特徴があります。

  • ジェンダーニュートラル: 性別を特定せず、多様な関係性に適用できます

  • 年齢に関係ない: 若い関係でも長年連れ添った関係でも違和感がありません

  • 関係性の本質を表現: 制度や形式ではなく、感情的な結びつきを中心に据えています

  • 敬意と親密さのバランス: 公の場でも私的な場でも違和感なく使えます

  • 交際関係に限らない: 友人、家族、またはそうした関係でくくれないものへも言及できます

「大切なひと」という表現は、相手を人として尊重する姿勢が自然に表れていませんか。所有や役割ではなく、お互いの存在そのものを大切にする関係性を示すことができます。

言葉が作る関係性

呼び方は単なるラベルではなく、関係性を形づくる役割があります。

「大切なひと」と呼ぶことで、私たちは日々の何気ない会話の中にも尊重と愛情を織り込んでいくことができます。

時代とともに言葉は変化し、新しい価値観を反映するようになります。

「大切なひと」という呼び方は、現代の多様な関係性と価値観に寄り添う選択かもしれません。それは歴史的文脈から一歩離れ、本質的な関係性に焦点を当てた、シンプルでありながら深い意味を持つ呼び方です。

パートナーシップの形が多様化する現代において、「大切なひと」という呼び方は、形式や慣習を超えた、本質的な絆を大切にする私たちの意識をあらわせるかもしれません。

Behind the insight

量子テレポーテーションをつかった通信は、なぜ光速を超えないのか

量子とは、物理量(エネルギー)の最小の不連続な単位のことです。電子や光子などです。量子という言葉は物理量が飛び飛びの値をとる性質を指し、これらの粒子は特殊な振る舞いがあり、量子力学で研究されています。

量子テレポーテーションとは

量子には、もつれ合うことでペアになる組み合わせがあり、一方の状態が確定すると、もう一方の量子の状態も瞬時に確定します

この状態の確定が即座に起こるため、まるで情報が瞬時に移動したかのように見えます。この現象を量子テレポーテーションと呼びます。

量子テレポーテーションを利用した通信とは

この瞬時に状態が確定する性質を利用すれば、光速を超える通信が可能になるのではないか、という発想があります。ここではこれを超光速通信と呼びます。

しかし、一般相対性理論によれば、時空間において光速を超える情報伝達は不可能(因果律)とされています。もし超光速通信が実現すれば、因果律が崩れる可能性があるため、これは物理学上の大きな課題となります。

しかし、量子テレポーテーションでは超光速通信は不可能

なぜ量子テレポーテーションを使っても超光速通信は実現できないのでしょうか?

1. 観測結果が確率的

量子もつれを持つ2つの量子を、アリスとボブがそれぞれ異なる場所で保持しているとします。

アリスが自身の量子を測定すると、その瞬間にボブの量子の状態も確定します。

量子もつれとは、たとえば次のようなイメージです:

  • アリスのガラス玉が割れていたら、ボブのガラス玉は割れていない。

  • 逆に、アリスのガラス玉が割れていなければ、ボブのガラス玉が割れている。

しかし、量子の観測結果は50%の確率で決まるという性質があります。これは物理法則であり、変更することはできません。

たとえば、吸音材が貼られている段ボールにアリスのガラス玉を入れて投げたとします。その結果、ガラス玉が割れている確率は50%です。このとき、遠く離れたボブのガラス玉も、50%の確率で割れており、50%の確率で割れていません。

このように、量子は確率的な性質を持ち、測定前は「複数の状態が重ね合わさった状態」になっています。これを量子重ね合わせといいます。

2. 観測が確率的なので、事前にパターンを作ることができない

観測結果が50%の確率で決まるため、アリスが事前に意図したメッセージを作り、ボブに伝えることができません。

たとえば、アリスが複数のガラス玉を使ってモールス信号のようなパターンを作ろうとしても、ボブが観測する結果は各ガラス玉ごとに50%の確率で決まるため、意図的な情報の伝達は不可能です。

どれを意図的に割って、どれを意図的に割っていないのかが50%の確率でしか、わからないということです。

3. 変化したことそのものを通信に使うこともできない

「ガラス玉が変化したこと自体を情報として利用できるのでは?」と考えるかもしれません。しかし、ボブの観測結果が50%の確率で決まるため、それがアリスの意図的な操作によるものなのか、ただの確率的な結果なのかを区別することができません。

アリスの段ボールへの操作と、ボブが段ボールを開けてガラス玉を確認した結果には 50% しか関係性がないからです。

割れているとして、それがアリスが操作したものである確率は 50% です。

4. 観測結果を伝える方法が光速以下

仮に、アリスが量子を操作した結果をボブに伝える方法があれば、ボブは情報として受け取ることができます。しかし、その伝達手段は通常の通信手段(のろし、手紙、電話、光通信)に頼るしかなく、これは光速を超えることはできません。

5. 状態が確定するとリセットできないため、一方通行

量子の状態は、一度測定されると確定し、それ以前の重ね合わせ状態には戻りません。

つまり、一度情報を取得すると、もつれたペアは使い捨てになり、同じ量子を再利用することはできません。

割れていないガラス玉を見ることはできますが、そのガラス玉が元に戻ったり割れたりを繰り返すことはありません。

状態をリセットできる量子コンピュータでは通信はできないのか?

量子コンピュータでは、量子状態を操作して計算を行いますが、その結果を取得するためには観測が必要です。

この観測が行われると、情報は古典的な値として読み取られます。つまり、最終的な情報の伝達は光速以下の制約を受けることになります。

したがって、量子コンピュータを利用しても、超光速通信を実現することはできません。

結論

量子テレポーテーションは量子もつれにのみ起こる特殊な現象であり、それを利用した超光速通信は実現しません。

Behind the insight

私たちが “もっているものでうまくやる” には、少しずつ自分の世界を広げ、自分自身を理解し、思いがけない組み合わせを試してみる必要があります。これらは、そのプロセスの様子です。

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