#9 受容と変容、自己愛と絆

マンガによる横断的教養

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今回はゆとりくん(片石貴展)と坂井風太の対談が興味深かったため、メモを書きながら視聴しました。片石貴展は yutori inc. という企業でファッションブランドの運営事業、坂井風太は Momentor で人材育成の事業を行っています。相互の発言に感覚と知識を織り交ぜながら進んだ対談となっていました。

中性という存在の特殊性

まず対談の中で興味深かったのは、片石氏の見た目に対する言及です。彼は髪を伸ばし中性的な見た目になるようキャラクターをつくっています。なぜそのようなキャラクターにしているかというと「中性を半神だと思っている」からだそうです。そしてこれは日本社会の同調圧力へのカウンターだと語られました。

日本人は自分と同じだと思っている人に対して特に厳しくなる傾向があり、これは自分に厳しいからこそ、同類にもその厳しさが反映されるということかもしれないそうです。そんな同調圧力の強い社会において、性を超越した存在(=半神)として発言することで、むしろ受け入れられやすくなるという興味深い現象があるということでした。

対立するのではなくズラすところに、ファッションをビジネスにしているひとならではの感覚だと感じました。

楽しさへの恐怖と自尊心の問題

片石氏の「楽しいことって怖い」という言葉も印象的でした。楽しいことはいつか終わってしまうから怖いものであり、楽しさよりも心地よい感覚を維持したい、そのためには自尊心が必要だと話します。

多くの人は「大変なことを大変にやることで気持ち良くなってしまう」傾向があるが、本当のセンスは「大変なことを楽しく(心地よく)やること」にあると言います。

そして自分に対する思いやり(セルフコンパッション)がない人は、過剰に他人に対して厳しくなってしまいます。先ほどの半神の話にもつながるところがあります。

尖りが取れる瞬間

人の尖った部分が取れる瞬間として、恋愛や結婚が挙げられました。愛されることで傲慢さが溶けるというのは感覚としてわかります。無条件に受け入れてもらえる経験はセルフコンパッションを高めるのでしょう。

片石氏が強調していたのは「感謝しないのはよくない」ということ。運が良いということは感謝力が高いということと等しく、恩恵に気付けるかどうかが人生を大きく左右していると言います。(片石氏はスピリチュアル的な発言を意図的に行うひとです。)

「知恩(他者から受ける恩恵に感謝すること)」という概念も紹介されました。「おかげ」を口癖にすることで人間関係が良くなったという実体験も坂井氏から語られました。

行動を変えることで考え方を変えるという実践的なアプローチですが、インターネットによって絆や愛を忘れがちになっていた現代社会で、それに対する揺り戻しが出てきているという指摘も興味深いものでした。

マネジメントではなくプロデュース

「心のない理論は無価値」という言葉から、マネジメントではなく「プロデュース」という概念が語られました。プロデュースには魅力的な事例がたくさんあり、ミン・ヒジン(New Jeans)や鈴木敏夫(ジブリ)などの名前が挙げられました。

プロデュースをするには「人の良いところを見る」必要があります。人に厳しいと悪いところが目についてしまい、プロデュースが難しくなってしまうということです。

そもそもマネジメントとは時間や予算を管理することであるわけで、ひとをモノのように管理するとは相性が悪いです。さらに現代に求められている傾向として、各々の能力の発揮を目指す社会になっており、マネジメントからプロデュースへという考え方には合理性がありそうです。

何よりマネジメントはプロデュースのなかに含めることができます。

妬みとの向き合い方

妬みには良い妬みと悪い妬みがあるという話も出ました。

  • 良い妬み:「マネしちゃお」と思える妬み

  • 悪い妬み:ただ落ち込むだけの妬み

建設的な妬みは成長につながりますが、破壊的な妬みは自分を苦しめるだけということであり、SNSで多様な才能が目につく現代において、妬み(心)に対するスタンスとして適切なように思えます。

才能について

片石氏の「才能はいびつな形をしている」というのも印象的な言葉でした。だからこそ気づくのが難しい。一般的な「普通であれ」という言葉に対して、その才能に気づこうとしない(良いところに気づく努力をしない)もったいなさへの怒りを感じるという話もありました。

才能の軽視への怒り、これは創作や表現に関わる人なら誰しも感じたことがあるでしょうし、オフィスワークの中ですら、良い動き・働きへの評価の低さを感じたこともあるのではないでしょうか。

現代社会の課題

坂井氏による、現代社会人の問題は家庭から来ているという指摘もありました。家庭内でどのような経験をしてきたのか、そこでの身体的経験から生まれた問題が社会に出たときに露出するという話はなんとなくわかる気がします。

そして大切なのは仕事を通じて「世の中を良くしているのか?仲間を大事にしているのか?」という根本的な問いです。

Yutori ではファンダメンタルズにフォーカスすることでビジネスの邪念を消しており、自然な形で勝負することの重要性が語られました。

マンガという教養

最後の締めくくりとして、今回の対談で語られた様々なテーマを横断するものとして、身体的経験を補うものとしてのマンガの可能性について触れられました。

マンガはポップカルチャーでありながら、深い洞察を得ることもでき、西洋における古典文学が果たす役割を、日本におけるマンガが担っているように思えました。絵があり、現代の価値観に寄り添っているマンガは、より広い人々へ伝えられるため、古典を超えるポテンシャルがあるのではないでしょうか。

この対談からは、現代社会を生きる上での多くのヒントが得られました。中性という立ち位置の特殊性から始まり、自己受容、感謝、プロデュース思考、才能への気づき、そして身体的経験まで、幅広いテーマが語られた興味深い内容でした。

Behind the insight

  • 【自己肯定感を“爆上げ”する習慣】ゆとりくん&坂井風太が激論/不安定な自己愛の危険性/SNSでの誹謗中傷はなぜ起きる/親の教育との関係性/怒りを使命感に変える方法/「おかげ」に気付く重要性【1on1】 https://www.youtube.com/watch?v=6eF__l8aE-k

私たちが “もっているものでうまくやる” には、少しずつ自分の世界を広げ、自分自身を理解し、思いがけない組み合わせを試してみる必要があります。これらは、そのプロセスの様子です。

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